最後に見た光

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暗い。 なぜ自分が真っ暗な自宅のリビングのイスに座っているのか。 新堂篤司(しんどうあつし)は目覚めた直後のような、ふらふらした頭で考えた。 今日は母さんの誕生日で、小学校の帰りに弟の孝司と一緒にプレゼントを買いに行ったのは覚えている。 その後の記憶が曖昧だ。 状況のわからないまま篤司は、暗闇の中、立ち上がろうとした。 …違和感に気づく。 手足がイスに縛られている…。 暗闇に慣れてきた目で篤司は、自分の手がガムテープのようなものでイスの肘置きに片方ずつ縛られているのを見た。 急激に篤司の脳は覚醒し、一種のパニックに陥った。 とにかくこれは、普通じゃない事が起こっている――。 「…母さん!」 必死の思いで出た言葉は、26畳の広いリビングに不気味に響いたが、返答は無かった。 涙目になる篤司。もう一度叫ぼうと口を開きかけた時、リビングの外の廊下から足音が聞こえた。 ドアが開くのが、うっすらと見える。 篤司は誰かが助けにきた事に期待した。 だが、ドアの向こうから現れたのは母さんじゃない。父さんでもない。孝司でもない。 知らない男だった。 男は背が高く、全身黒っぽい服を着ているように見えた。
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