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午後10時30分。
そろそろか。
新堂篤司は、あの事件の後、伯父の家に引き取られた。
引き取られたといっても、篤司には他に身よりも無く、行くあてがないので仕方なく伯父は篤司を育てる事を引き受けたようだ。
義務教育である中学校の学費は全面負担してくれたが、その他衣食住に関しては、家の手伝いをしないとろくに与えてくれない。
家の掃除はいたるところまで、食事の準備の手伝いや洗濯なども、家の中でできる事は全てやらされた。
篤司は目が見えないというのに。
なんとか普通中学校の特別教室に通わせてもらっている篤司に、文句は言えなかった。
まずここへきて、家の間取りや家具の配置を覚えるのに苦労した。
どこにどの食器がしまってあるか、掃除機の置いてある場所はどこか、頭を低くしないと通れない和室の入口の場所など、これらを覚えるだけで神経を擦り減らした。
そんな篤司に、伯父も伯母も辛くあたった。
子供のいないこの熟年夫婦は、余生も2人だけで過ごそうと思っていた。
そんな時、仲の悪かった篤司の母親(伯父の妹)の子供を引き取れという話がきた。
しかもその子供は目が不自由だという。
伯父夫婦は、篤司を煙たがらないはずがなかった。
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