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いつものように、伯父は足元をふらつかせ、篤司の部屋のドアを力強く開けた。
「今日は日本酒ですか」
篤司は当たり前のように言い放った。
「さすがはアツシくん、鼻だけはいいんですねぇ」
匂いだけで酒の種類を判断した篤司に、伯父は皮肉を込めた口ぶりで言い、篤司の隣に座った。
伯父はかなり酔っている。
また、今日も始まる。
まず篤司の学校での成績を引き合いに出して説教をする。
たいして成績がよくはないが、悪くもない。目が見えないなりに頑張っているつもりだ。
点字も完璧に覚え、中学の勉強には熱心に取り組んでいる。
伯父は、なんでもいい、篤司に文句をつけられればそれでいいのだ。
いつものように説教を続ける伯父は、篤司を罵り始める。
そして最後には必ず殴る。
少し前、篤司は伯父の気配を察して、飛んでくる拳を避けた事があった。
声の聞こえる距離、殴るときの声の変化などを見極め、見事に避けてみせたのだ。
その時の伯父の怒りようは凄まじかった。
目が見えないくせに上等に振る舞うなと、殴られ蹴られ、口の中に血の味が広がっていった。
それ以来、伯父の拳を避ける事はやめた。
ひどい怪我をしても治療するのは自分自身なのだ。
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