闇とともに

4/6
前へ
/177ページ
次へ
いつものように、伯父は足元をふらつかせ、篤司の部屋のドアを力強く開けた。 「今日は日本酒ですか」 篤司は当たり前のように言い放った。 「さすがはアツシくん、鼻だけはいいんですねぇ」 匂いだけで酒の種類を判断した篤司に、伯父は皮肉を込めた口ぶりで言い、篤司の隣に座った。 伯父はかなり酔っている。 また、今日も始まる。 まず篤司の学校での成績を引き合いに出して説教をする。 たいして成績がよくはないが、悪くもない。目が見えないなりに頑張っているつもりだ。 点字も完璧に覚え、中学の勉強には熱心に取り組んでいる。 伯父は、なんでもいい、篤司に文句をつけられればそれでいいのだ。 いつものように説教を続ける伯父は、篤司を罵り始める。 そして最後には必ず殴る。 少し前、篤司は伯父の気配を察して、飛んでくる拳を避けた事があった。 声の聞こえる距離、殴るときの声の変化などを見極め、見事に避けてみせたのだ。 その時の伯父の怒りようは凄まじかった。 目が見えないくせに上等に振る舞うなと、殴られ蹴られ、口の中に血の味が広がっていった。 それ以来、伯父の拳を避ける事はやめた。 ひどい怪我をしても治療するのは自分自身なのだ。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

234人が本棚に入れています
本棚に追加