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「充分触ってんだろ、これ以上なんの文句が有るって言うんだよ」
大体、門に足を踏み入れてまだ一時間も経っていないのに。
他にやることなんて幾らでも有るだろう、じじいのご機嫌窺いに、首を長くしてあんたの帰りを待っていた父さんに土産話したり───
俺が目を反らして脚で彼の腹を押すと、更に掛ってくる圧力。
「馬鹿だね、俺はもっと深い所でお前と繋がりたいんだよ」
…あぁ、あんたは本当の馬鹿なんだな。
俺なんかに、目をくらませて。
足の指で、畳の目をなぞってみる。
きゅ、きゅ。
…さっき畳で擦れた背中が、ひりひりと痛む。
余程強く擦れたんだな、だってなぞっただけでは傷になんかならない。
ぼんやり考えていると、庸介の唇が瞼に寄せられた。
放って置かれた、なんて思ったんだろーか。
わざわざ気を引こうなんて、庸介らしくもない。
「庸介、今回は早く帰って来たんだな」
前は、3年、帰って来なかった。
18の庸介と21の庸介じゃ随分と差が、有るのに。
どんな暮らしをしていたんだろう、
どんな人と触れ合ったんだろう、
───気になって、気になって。
俺を混乱させて楽しんでる所が庸介には、有る。
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