第一章 ~始まりの声~

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 「信じられん…。本当に、人間なのか…」  「何を言ってるの。当たり前でしょ。幽霊なんかじゃないですよーだ」  少女は僕の言葉に憤慨し、リスのように頬を膨らませた。  理解に苦しむが、この少女の存在は、幻影などではないのは間違いない。地に足はつき、影もあり、無論、実体もある。  僕は、胸に残った苛立ちを捨て切れぬまま、剣を鞘に収めると、投げやりな溜め息を漏らした。  「…なるほど、よくわかった。  しかし、小舟に乗ってここへ来たのかどうかは、別問題だ。  今から確かめに行く。お前も来い」  そう言って、少女の回答を待たずに歩き出した。少女は慌てて僕についてくる。  教会を後にし、長い回廊と、無駄に広いエントランスホールを抜けて、巨大な扉を押し開ける。暖かい日差しに包まれ、湖の上を滑る微風に頬を撫でられながら、崩れかかった石の階段を下りたところで、それを見つけた。  前方に迫る湖の畔に、静かに漂う小舟を。さざ波に何度となく揺られてもなお、岸辺から離れない小舟を。
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