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僕は言葉を失った。
世界と切り離されたはずのこの場所に、何故か辿り着いた小舟と、少女。
ありえない。ありえない事だった。少なくとも、これまでは。
「ね。本当でしょ? 私の事、信じてくれた?」
少女が僕の深蒼のマントを引っ張り、楽しげに微笑う。
「…嘘、だ。こんな…こんな事が…」
「嘘だったら、この小舟はないでしょ?」
「…それは、そうだが…」
未だに事実を受け入れられない僕に、少女は不満そうに眉根をひそめた。
「もうっ。素直じゃないなぁ、お兄ちゃん。『確かめる』って言ったのは、どこの誰?」
「確かに、そうは言ったが…」
「ストーップ。お兄ちゃん、そこまでっ。いい加減に信じてよね。本当なんだから」
少女にそう言われて、再び、重い息を吐いた。
この状況を目にした以上、少女の話を信じざるをえないのは確かだ。それにしても、一体どうしてこのような事が起きたのだろうか。頭を巡らせど、全く想像もつかない。
とりあえず、今は、考えても結論を出す事はできないと思い直し、改めて少女を見やった。
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