序章 ~終わらぬ悪夢~

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 あれから、どれほどの月日が流れたのだろう。  それを知る術は、何処にもない。  日記はもう、つけていない。綴る内容が変わる事はないからだ。  荒れ果てた古城を彷徨う人の姿は、ただ一つ。  人間として在るべき感情や願望を失い、身体という殻を保持している僕だけだ。  どんなに過去を思い起こそうとしても、蘇る記憶は、ごく僅かな断片。  深き懺悔の念と、底を知らぬ哀しみ、そして、儚き想いが、常に付き纏い、僕の胸の内で激しく渦巻いている。  瞳に映るは、宝石のような硝子の破片が煌めく、褪せた絨毯。引き裂かれたカーテンに、窓から零れ落ちる光が静かに揺らめく光景。扉を開けば、おびただしい数の十字架が庭にひしめき、風とともに哭いている。  あの頃から全く変わる事のない、時間の凍りついた風景だ。
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