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ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。
時計台の鐘が、五回、重たげな低音を城内に響かせる。
僕はゆっくりと瞼を開き、窓の外へと視線を走らせた。
水平線の彼方から、太陽が少しだけ顔を覗かせている。夜を押し退け、巨大な湖を照らすその光は、今日という一日の始まりを煌びやかに知らせるのだ。
城を取り囲むように広がる湖面はきらきらと輝き、微風と戯れては、小さなさざ波の造形を作り出す。
外から遊びにやってきた風も心地よく、窓辺に腰掛けた僕の心に、温かい感情を呼び起こしてくれるものの、それも束の間の話で、すぐに漆黒の闇に囚われて、虚しく残像を揺らすのみである。
僕は、ふっと、溜め息を胸に落とした。
今日も、僕は、生きている。
暗くて哀しい一日が、また、始まる。
抗う事のできぬ己の宿命(さだめ)にひどい欝を感じるが、立ち上がって部屋を出る頃にはもう、薄れ始めていた。
眠る事を放棄した僕が、朝を迎えて行くべき場所は、一つしか、ない。
ひび割れた窓から差し込む朝日は、仄暗い回廊の灯と溶け合って、淡白く幻想的な空間を描き出している。他の誰もいない、静かな城の中で、僕のブーツの音だけが、軽やかな笑い声を立てて。
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