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食事をする事など、いつの間にか忘れてしまった。そもそも、食料自体がとっくの昔に尽きたのだ。
水分を摂取するだけで過ごせる自分は明らかにおかしいとは思うが、もはや、そんな疑問を抱く事さえ、今では馬鹿馬鹿しいと思えてしまう。
水に困る事はないため、入浴こそ欠かさないものの、気持ち良いものだという感覚は、すでに、ない。
そして何より、僕は一向に老いる事なく、独りで暮らしている。埃にまみれる事も、崩壊する事もない、この城で。
いかなる理由で、この不可思議な状態に陥ったのか。長い年月を経ても、その謎は解ける事はない。
わかっている事は、ただ一つ。
城に住まう人々は全員息絶えてしまったのに、僕だけが生き残っているという事。
過去の記憶の大部分が欠落しているなか、鮮明に思い出せるのは、遠い過去の惨劇。
僕の内に潜む“力”が、災いの種となった、あの日の出来事だ。
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