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「誰かいるの?」
突然、聞き覚えのない声が響いた。僕は我が耳を疑った。
ここは、遥か昔に廃れ、全てから隔絶された場所。
湖の果てまで行こうとしても、決して辿り着く事はできない。何度も試してはみたが、必ず城へ回帰してしまう。つまり、他の人間がここへ立ち入れるはずがないのだ。
しかし、もう一度。
「ねぇ。そこに座り込んだまま、何をやってるの? 誰と話をしてるの?」
はっきりと、聞き取れた。間違いなく、人の声だ。
僕は、内心ひどく驚きつつも、腰の鞘に収まっている剣に素早く手をかけ、振り向きざまに立ち、剣を抜いた。
「何者だ!?」
そう口にした直後、僕の眉間に小さな皺が寄せられた。扉よりやや手前に佇んでいるのは、一人の少女だった。
肩まで伸びた銀色の髪が、光を放っていて美しい。ぱっちりと開かれた瞳は、晴れた空模様を映しているかのように澄んでいる。整った顔立ちではあるが、白いベビードールを纏ったあどけない表情からは、十歳前後と推察できた。
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