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「どうしよう」
青年が姿を消した瞬間に居合わせたダームは、そう呟くと悔しそうに涙を流し始めた。少年の体は微かに震え、その目は段々と赤みがかっていく。
「ザウバーは、自然魔法の使い手だ。だから、心配は要らないだろう」
ベネットは、顔色の悪いダームを気遣う様に、優しい声で自らの考えを述べていった。彼女は、少年と目線を合わせる為にしゃがみ込み、小刻みに震えている体を優しく抱き締める。
「それに、ザウバーの生命力はゴキブリ並なのだろう? 連れ去られたとしても、大丈夫な筈だ」
ベネットは、少年だけで無く、自らにも言い聞かせる様に強い口調で話した。そして、少年の涙を右手で優しく拭うと、近くに有った椅子へ腰を下ろす。
「一先ず、夜明けまでは待とう。それまで待っても戻らなかったら、捜しに行けば良い」
ベネットは、ゆっくりとした口調で話すと、ダームも座るよう勧めた。
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