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ダームは、口を開くこと無く頷くと、ベネットが座っている右側の椅子へ腰を掛けた。
「今日は早めに休もう。この部屋にベッドは無いが、寒空の下で野宿するよりは良いだろう」
そう言うと、ベネットは少年の頭を軽く撫で、荷物の中から二枚の毛布を取り出す。彼女は、それらの毛布を広げると、そのうち一枚をダームへ手渡した。
「私は、明日に備え早めに休もうと思う」
それだけ言うと、ベネットは毛布を持つ手に力を込める。
「ザウバーのことが心配で眠れないかも知れない。だが、目を瞑るだけでも幾らか休める。だから」
ベネットは、そこまで話したところで言葉を詰まらせてしまった。
「僕も、疲れてるし寝てみるよ」
ベネットが、自分を落ち着かせ様としていることに気付いたダームは、気を遣わせまいと出来うる限りの笑顔を作る。そして、彼はベネットから受け取った毛布を被ると、その端を首の周りに巻き付けた。
「それじゃ、おやすみなさい」
小声で告げると、ダームは目を瞑り大きく息を吐き出した。
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