寂寥

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「そう言って下さるなら、嬉しい限りです。ところで、一人足りなくはありませんか? 確か、昨日は男性の方が居たと思ったのですが」  ミーアは、朧気な瞳で部屋を見回すと、たどたどしい口調で言葉を紡いだ。 「あれは、目を覚ます為に暫く散歩をするそうだ」  ミーアを心配させまいと、べネットは咄嗟に偽りの言葉を発した。彼女は、表情をミーアに悟られまいとしてか、その目線を家の出入り口へと向ける。 「良かった。もう一人の方が男性でしたので、もしかしたらカシルに連れ去られたのかと」  そう言うと、ミーアは手の平を胸に当てて軽く目を瞑った。 「ザウバーは、ああ見えて魔法の使い手だ。何か起きても迅速に対応するだろう」  ベネットは、自分にも言い聞かせる様に言葉を加えると、ミーアに対して優しく微笑みかける。
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