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波の音が響き渡る海岸で、十代半ばの少年と、二十代前半の男女がそれぞれに立ち尽くしていた。その内、蒼い瞳を持つ少年は、冷え切った体をさすりながら、夕陽に染まった海辺を見回している。
「ねえ、ベネットさん。ここは、一体どこなのかな?」
そう問い掛けると、少年は女性の服を軽く引き、顔を見上げる。この時、少年の声は小さく震えており、彼らの居る場所の寒さが窺えた。
少年に呼び掛けられた女性は、一呼吸置いてから海岸沿いを見回す。すると、彼女の瞳には、数分程歩けば着く場所に建つ小屋が映し出される。
「私にも良く分からない。だが、近くに建物が見える。一先ず、あの建物の方に向かってみよう」
少年の質問に答えると、ベネットは自らの長髪を掻き上げた。彼女が言葉を発する度に白い息が生じており、それは海風に乗って霧散していく。
また、彼女の黒髪は風によって微かに靡き、時折その毛先が少年の頬を撫でていた。一方、彼女の横に立つ少年と言えば、自らの顔に触れる髪を気にすることなく、青年の顔を見上げる。
すると、少年の目線に気付いたのか、青年が体を震わせながら口を開いた。
「だな。ずっと寒い場所に居たから、早く宿を見つけて暖まりてえ」
そう話す青年の顔色は蒼白で、絶え間なく体を震わせている。また、潮風によって濡らされたのか、彼の髪は微かに湿っていた。
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