寂寥

20/43
前へ
/269ページ
次へ
 その後、ベネットはザウバーが姿を消した事で気を遣わせまいと、そそくさとミーアの家から離れていった。ダームは、そんな仲間の後を追い、何度か腫れた目で後方を振り返る。 「此処まで離れれば、恐らくミーアは気付かないだろう」  ベネットは、ミーアの家が見て取れない場所まで移動した時、呟く様にダームへ話し掛けた。  その後、ベネットは軽く目を瞑って胸の前で手を組み、小さな声で何かを唱え始めた。すると、ベネットの周りからは柔らかく暖かな風が螺旋を描いて巻き起こる。  その風が徐々に勢いを増し、ダームが両足に力を入れ始めた時、ベネットの足元を中心として銀色に輝く円陣が現れた。  暫くして風は収まり、ダームは安心した様子でベネットの方を向く。すると、ベネットを中心とした円陣は、地面を這う様にして勢い良く広がり始めた。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

739人が本棚に入れています
本棚に追加