寂寥

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 男性は、手を擦りながら二人に近付くと、素早く少年の背後に周り込んだ。その後、少年が振り返る間もないうちに、青年は少年の首へ冷え切った手を静かに添える。  少年は、突然の出来事に背筋を思い切り震わせ、間の抜けた声を漏らした。そして、彼は男性の手を振りほどく為に体を捻ると、目に涙を浮かべながら口を開く。 「ザウバー! いくら寒いからって、僕で暖まろうとしないでよ!」  少年は、叫び声をあげながら男性の目を見据え、そのまま数歩後ろに下がる。それから、少年は身に付けている上着の襟を掴むと、自らの首を護るように引き上げた。 「いいじゃねえか少し位。それに、子供の体温は高いっていうしな」  ザウバーと呼ばれた男性は、そう言うと全く反省の色を見せる事無く笑い始める。彼の台詞を聞いた少年は頬を膨らませ、不機嫌そうに口を尖らせた。 「全然、理由になってないよ!」  青年の発言に呆れた少年は、小刻みに歯を鳴らしながらベネットへ目線を送る。少年の目線に気付いたベネットと言えば、細く長い息を吐きながら、仲間の顔を交互に見やった。
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