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「顔色が悪いな。どこか悪いのか?」
心配そうに話し掛けると、べネットは首を傾げて女性の顔を覗き込んだ。その仕草に気付いた女性と言えば、静かに大粒の涙を流し始める。
そんな中、ザウバーは女性が泣き出した為に困惑し、意味もなく辺りを見回す。数拍の後、彼は落ち着きを取り戻したのか、無言でベネットと女性のやり取りを見守り始めた。
「この町は、魔物に襲われでもしたのか?」
戸惑う青年とは対照的に、ベネットは慌てる事無く女性に疑問を投げかけた。すると、それを聞いた女性は、静かに上着の裾で涙を拭う。
「わかりません。でも、この町……この町の男性達は」
しゃくりあげながら質問に答えると、女性は顔を覆って泣き始める。
「男性が、一体どうしたと言うのだ?」
ゆっくりとした話し方で質問をすると、べネットは女性の肩へ静かに手を置く。
「カシルと名乗る女に誑かされ……その女に、どこかに連れて行かれました」
そこまで話すと、女性は自らの顔を覆っていた手を徐々に離していった。そして、数回大きな瞬きをすると、涙で赤みを帯びた瞳でベネットの顔をぼんやりと見つめる。
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