寂寥

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「町に残ったのは女子供のみ……労働力を欠いた町は、見ての通り荒廃してしまいました」  女性は、何度か苦しそうに咳き込むと、何かを訴えるような眼差しをベネットへ送った。すると、ベネットの手は力無く下ろされ、その片目は強く閉じられる。 「私は……共に生きようと言ってくれた人を奪われました」  涙を流しながらも話し続けた女性は、ついに言葉を詰まらせた。彼女は、悔しそうに唇を噛み締め、その両目を強く瞑る。一方、女性の心中を察した三人は、互いに顔を見合わせる事しか出来なかった。  幾らかの時間が経ち、重苦しい空気が周囲を支配する中、ベネットはその沈黙を切り裂く様に口を開く。 「貴女さえ良ければ、詳しい話を伺いたい。そこに手掛かりとなるものが有れば、手助けも出来る」  そこまで話すと、ベネットは心配そうに女性の顔を覗き込んだ。 「私の知る情報であれば……お話し致します」  ベネットの話を聞いた女性は、そう返すと再び上着の袖で涙を拭った。
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