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僕達が通っていた小学校の校庭の隅に一本の大きな桜の樹があった。
この年になっても未だにあれほど大きな桜は見たことがなかった。
その桜の樹は、生徒達の間でお化け桜と呼ばれていた。
昔、戦争にかり出された兵隊さんと、それを悲しんだ婚約者の女性がいた。
いよいよ徴兵という日の早朝に二人はその桜の樹の下で、お互いに刺し違えて亡くなった。すでに老木だったがそれでも静かに色付いて散り行く桜の花に包まれるようにして。
その事件あったの次の年から、不思議その老木は、若返ったかのように、その枝に見事なほど色鮮やかな花を付けるようになった。
町の子供たちの間では、桜はその兵隊さんと婚約者の女性の血を吸ったから、あんなにきれいな花が咲くのだと噂が流れた。
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