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僕は隆が死んだ理由を知りたかった。
隆の母には思い当たることは無いらしく、目が覚めた後も正気をなくしており、何故死んでしまったの、と1日中遺影の前で呟き続けていた。
見かねた両親は、しばらく隆の妹の美代子を家で預かることにした。
美代子は隆と正反対の明るく人なつっこい性格で、兄が亡くなり母親がああいう状態になってしまっても、僕達の前では笑顔でいた。
でも僕は、夜中に美代子が1人で泣いてるのを知っていた。
幼い兄妹を養うため仕事に追われ、隆の様子の変化に気づくことができなかった母よりも、美代子ならそのことを敏感に感じていたかもしれない。
ある日、学校の帰り道が偶然美代子と一緒になった。
美代子はいつもの様子で明るく振る舞いながら、九九を全部言えるようになったとか、縄跳びの二重飛びがどうしても跳べなくて休憩中に友達といつも練習していることなどを話していた。
「お兄ちゃん、いじめられてたの…。」
突然、うつむいて歩くのをやめてしまった美代子はそう言った。
何故知ってるのかを尋ねると、美代子の同級生の女の子の兄も隆と同じクラスにいて、その兄から聞いたという事だった。
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