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ガルバンヌ城、王族区画。
限られた一族の者しか踏み入れることの出来ない、絶対領域の一室でシェイス・ルミアは目を覚ました。
「また、なの?」
純白に包まれたベッドから身を起こし、右腕を確認する。
カーテンレースの隙間から漏れる月明かりに、渦巻状の刻印が照らし出された。
「今朝、清めの儀を終えたばかりなのに……」
手を伸ばし、棚の上に置いていた三日月形のイヤリングを付ける。
小さな宝石が嵌められたそれは、月光に反射してエメラルドに輝いた。
「目覚めたか」
シェイスの耳に、聞き馴染みのある声が聞こえてくる。
「クルス、場所は?」
「城内の地下、北西部から強い力を感じる」
「その位置だと……宝物庫付近かしら」
わずかに残る眠気を振り払い、頭を巡らせる。
「ああ、その通りだ」
短く返答するクルス。
まるで唸るような声は、大型の獣を彷彿とさせる。
「厳重な警備態勢を敷いてるはずなのに……ただの盗人ではなさそうね」
シェイスは輝光石を幾つか掴むと、真っ直ぐに扉の方へと向かっていった。
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