‡資源一‡

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先生は、鞄から何処にでもあるジュースの空缶を取り出した。 そしてプルタブを丁寧に取り外した。 スケールが小さいのはご愛顧、だそうだ。 「アルミ缶のプルタブが一番使いやすいぞ!」 先生はそう言い、プルタブを掌にのせて眼を閉じた。 「最近覚えた技術を見せてやるからな。しっかり見ておけよ」 銀色の、親指の爪よりも少し大きいそれを左手に持ち、ゆっくり回し始める、と細く、細くなっていく。決して先生の握力が強いわけではない。 〈資源〉とは、一種の万能エネルギー。しかし、聞こえはいいがその実、既に教科書へ掲載されるほど有名な法則から、まだまだ未知の法則が眠っている。 3年程度では、このイレギュラーな存在を隅々まで知る事は敵わないのだ。 ――あっという間に梅津先生のプルタブがアルミの針となってしまった。 「ふぅ、まあ知っての通り! 俺の〈資源〉は、Al(アルミニウム)だ。何時もは、粉末を使っていたが、失敗するから妥協した」 偉そうに言うことではない。 クラス一同がそう思っただろう。 「ま、応用次第では、なんだって出来るのがこの〈資源〉の面白いとこだ。全員、毎日探求することだ。そうすれば来週に行われる、ResourceStadium(資源の大会)の予選に出れるかもな」 ここでチャイムが鳴り、今日の授業が無事終わった。
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