758人が本棚に入れています
本棚に追加
草花が最後の力を振り絞り、実りをもたらす季節でもあり、そして紅葉し、彩る季節。秋である。
しかし、年中平野部では十度以下を更新しない現在の日本。
季節など、温暖化と言う地球全体の問題の前では、関係ないのかもしれない。
そんな、気温が一向に下がる気配を見せない九月下旬。
夕暮れが間近に迫り、なんの変哲もない道を赤く染める時間帯。
学校の通学路であるそんな道を走る二台の自転車がいる。
その中の一台が、前を走る一台に列んだ。
「ういっす!! 今日は部活なかったのか?」
はつらつとした青年の声。
前を走っていた自転車に追い付いたその声の持ち主――典型的な黒髪を、短くスポーツ刈りにして、その下の瞳は力強く輝く黒。
煌々とした太陽に負けないぐらい元気な笑顔を絶やさない、見るからに運動部系の爽やか、に見えるが真逆の、それもとてつもないという形容詞がつく“熱血”男子。
彼は虹の小学校からの長い付き合いである親友、山本良成(やまもとりょうせい)だ。
学校でよく絡んで来る事はあっても、帰宅途中に会うのは珍しい。
何故なら二人の家の方向が違うからだ。
ちなみに、虹は弓道部。
山本は剣道部だ。
「お、今は虹(にじ)の方か」
余談だが虹(コウ)は、あだ名で(にじ)と呼ばれている。
余りにも簡単な呼び名は、彼らの付き合いの長さを裏付けている。
「ああ、今は俺だよ。瑠璃(るり)はまだ寝てる」
虹は、そう言って苦笑した。
「ははっ、相変わらず自由だな。ところでResourceStadiumの話しは聞いてるよな」
虹はゆっくり頷いた。
「あれだろ、昔々のオリンピックの真似事だろ?」
それに対し山本は、否定する様に首を振った。
「全世界の人達が集まり競い合うのは、確かに五輪みたいな物だけどさ。規模が違うぞ! なんせ、〈資源〉が使える奴は誰だって参加できるんだからさ」
最初のコメントを投稿しよう!