二人は一人

2/12
前へ
/395ページ
次へ
草花が最後の力を振り絞り、実りをもたらす季節でもあり、そして紅葉し、彩る季節。秋である。 しかし、年中平野部では十度以下を更新しない現在の日本。 季節など、温暖化と言う地球全体の問題の前では、関係ないのかもしれない。 そんな、気温が一向に下がる気配を見せない九月下旬。 夕暮れが間近に迫り、なんの変哲もない道を赤く染める時間帯。 学校の通学路であるそんな道を走る二台の自転車がいる。 その中の一台が、前を走る一台に列んだ。 「ういっす!! 今日は部活なかったのか?」 はつらつとした青年の声。 前を走っていた自転車に追い付いたその声の持ち主――典型的な黒髪を、短くスポーツ刈りにして、その下の瞳は力強く輝く黒。 煌々とした太陽に負けないぐらい元気な笑顔を絶やさない、見るからに運動部系の爽やか、に見えるが真逆の、それもとてつもないという形容詞がつく“熱血”男子。 彼は虹の小学校からの長い付き合いである親友、山本良成(やまもとりょうせい)だ。 学校でよく絡んで来る事はあっても、帰宅途中に会うのは珍しい。 何故なら二人の家の方向が違うからだ。 ちなみに、虹は弓道部。 山本は剣道部だ。 「お、今は虹(にじ)の方か」 余談だが虹(コウ)は、あだ名で(にじ)と呼ばれている。 余りにも簡単な呼び名は、彼らの付き合いの長さを裏付けている。 「ああ、今は俺だよ。瑠璃(るり)はまだ寝てる」 虹は、そう言って苦笑した。 「ははっ、相変わらず自由だな。ところでResourceStadiumの話しは聞いてるよな」 虹はゆっくり頷いた。 「あれだろ、昔々のオリンピックの真似事だろ?」 それに対し山本は、否定する様に首を振った。 「全世界の人達が集まり競い合うのは、確かに五輪みたいな物だけどさ。規模が違うぞ! なんせ、〈資源〉が使える奴は誰だって参加できるんだからさ」
/395ページ

最初のコメントを投稿しよう!

758人が本棚に入れています
本棚に追加