二人は一人

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「スケールでかいな。世界の人口が度重なる天災で五年前から減り続けているからって……絶対規模がおかしいぞ」 それに対し山本は、ニヤリと不敵に笑った。 「数が多いなら当然、国ごとに代表を決めるんだよ。各国から一チーム五人で五チームが世界大会に出られる……流石に狭き門だけど、なんとかなる!」 「おいちょっと待てよ。出る前提なのか!? っと、その前に五人集めないと駄目だろう」 虹は危うくガードレールにぶつかりそうになったが、間一髪で避けた。 話しが突拍子過ぎるし、なにより急なのだから気持ち云々が固まってもいない。 虹は慎重派なのに対し、山本は直ぐに熱くなるのだ。 ただ、そんな短所なのか長所なのか判断つかない性格ではあるが、その実、周りは見えていて抜目ない。常に先を見ているが、それを表に出さない男でもある。 策士というよりは、武人というジャンルに当て嵌まる。 そんな現代の若侍さんが、ニーッと笑う。 「お前の実力なら何とかなる! 梅津教官殿なんかより断然な。高校生活最後に花咲かせようぜ!」 山本は強引に話しを進めると、自分の家の方に向かって凄い速さで去っていった。 「拒否権無しか!」 吐き捨てるように山本の背中に向かって愚痴ったが、聞こえるはずもなく、電気自動車の疑似機関音に虚しく掻き消されたのだった。
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