二人は一人

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錦糸家にとって、金曜日は特別な日だ。 何故なら一家の大黒柱、父親が帰ってくるからだ。 科学者である虹の父親、錦糸 光治(にしきいこうじ)は、殆どが地元にある研究所での生活。衣食住は、休日以外もっぱら自身の研究室なのだ。 しかし、少しでも子共達に淋しい思いをさせないようにと、週に一回は帰って来てくれる、よき父親だった。 「忙しいのに、無理しなくていいのにな」 虹は家の前で自動車を止めると、少し嬉しそうに頬を緩ませ呟いた。 家からはいつもより早い夕飯の香が漂っている。 どうやら既に帰って来ているらしい。 自動車を敷地内に運び、虹は家の中に入った。
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