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犬に名前がつき喜ぶエイナたちを見て、アグニはふと優しい笑みを漏らした。
だが同時に思い出すのはあの記憶…
二週間前、あの戦いの後、犬を連れていく事に決めたあの後の深夜。
ムルタ国中央部にてニルティらが確認した謎の建造物を目指す、今のアグニたちの行動を決めた出来事。
深夜。皆が寝静まったその空気の中、アグニの夢中にある人物が現れた。
「アグニさん…」
その声はどこから聞こえるのだろうか。アグニは何もない空間に立ち、周りを見回した。
「…誰だ…?」
アグニの目の前で、何か人間のような物が微かな光を持って現れた。
「…言いたいことを伝えにきました。長くは話せません。でも…聞いて…」
今にも消えそうなその光の声に、アグニは聞き覚えがあった。
「レイ…?レイ…なのか…?」
ケロップが重傷を負い、そして行方不明になったレイ。アグニは思わぬ人物の言葉に驚く。そしてこれが夢でないとも感じていた。あまりに意識がはっきりしている。
「…はい。…ゼルファスという男の野望について…聞いて下さい。私の意志が消えるのはすぐだから…」
「…ああ。」
ゼルファス…ニルティが言っていたその名前を、アグニは心中で繰り返す。例の組織のボスで、危険な男だと聞いた。
「彼は…神と成り、世界を滅ぼそうとしています。」
レイのか細い声はそう言った。
「…神に…!?」
「詳しくは知りませんが、彼はこの戦いの事をずっと前から知っていて、準備してきたのだろうと思います。そして組織を作り上げ、「私」を作った…」
レイの言葉に、アグニは困惑する。
「お前を…?」
レイは、時間が立つにつれ苦しそうな声になっていく。
アグニは、行方不明になったレイを心配してはいたが、神の戦いに関係しているとは思っていなかった。
嫌な予感がアグニの胸をよぎる。
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