Ⅶ-Ⅰ 一つ一つの言葉

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ラードックでの戦いから二週間後。 ここはマルキオ国の南に位置し、同じくマルキオの南にあるレルシア国の西にある国、ムルタ。 ニルティらがマルキオ国に行く前にいた国だ。 アグニたちは再びブレア山脈を越え、こちら側へ戻ってきたのだ。 レルシアからマルキオへブレア山脈を越えた時と違うのは、イアとユノの存在。そしてもう一体…犬がいることであった。 「結局この子、着いてきちゃったねー。」 エイナが撫でながら言う。木陰に座るアグニはそれを見て溜息をつく。 「全くだ。そいつも何故か神の能力者とはいえ、そんな煎餅泥棒…」 「古い話に執着しないの、アグニ。」 エイナに宥めなれるアグニだが、いまいち納得できていないようだ。 「でもさ、こんなのんびりしてていいのか?タイムリミットは後六週間なんだろ?」 レオンは二週間前に聞いたある話を思い出して言う。 「充分急いでいるだろう。ニルティやリドらは今頃レルシアのどこらだろうな。」 アグニは、そう言って、どこからか突然串団子を取り出し貪り始めた。 (レイの言葉…五つの塔…。 あいつは残った数少ない力で、俺たちに情報を与えてくれた…。ゼルファスに世界を破壊させないために。 やはり…ラードック城に現れたのは…レイ…?) 串団子四つを一口で口に入れるアグニは、二週間前のラードックでの記憶を呼び起こそうとする。 もちろん銃は二つ揃っている。 もふっ 「あ、ほらやっぱ似合う!」 元気そうに言うユノと、何故か拍手するイアがアグニには見えた。 「お前ら…人の頭に犬を乗せて楽しいか。」
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