Ⅶ-Ⅰ 一つ一つの言葉

4/11
98人が本棚に入れています
本棚に追加
/430ページ
宿の部屋。 ラニとの戦いで少し深い傷を負っていたリドは簡単な応急処置を施され、眠気に負けてさっさと眠りについてしまった。 「…こいつも組織との戦いにはバラモスでの事があるんだろうな…」 アグニはそれを察し、考える。 「ねぇアグニ。」 「ん?」 エイナがアグニを呼ぶ。アグニが顔を上げると、次はレオンが口を開く。 「こいつ、神関係ならやっぱほっとけねぇよなあ。」 レオンやユノ、イアの中心にいたのは犬に間違いなかった。アグニは溜息。 「一緒に連れていこうよっ。それが安全だと思うよ?この子、野良犬で痩せてるしさ。」 ユノが笑顔で言い、エイナもまたアグニに言う。 「私もそう思う。アグニはどう?」 「…まぁ、問題ないだろう。しかしまた動物か。」 「また?」 アグニの言葉に、イアは顔を上げた。アグニはそれについて語り出す。 「そうだ。前にソーマというネズミと一緒に旅を…」 「へ~」 「ちょっ、それ人間!!イアも納得してるし!」 エイナが突っ込む横でイアは感心したように言う。 「という訳で、よろしくねポテ。」 「誰だそれ。」 「名前よ、犬の。」 「反対だ。」 エイナのネーミングに反対し、危うくポテと名付けられかけたアグニが犬の方を見た瞬間…。 「………………!!!」 アグニが鬼のような顔で絶句していた。キバやツノが生えてきそうな形相で、事実炎を吐いていた。 エイナが、静かにアグニの視線の先を辿ると、バリバリと煎餅を貪る犬の姿があった。 「削除」 銃を抜くアグニ。 「落ち着きなさいよ!」 それを止めるエイナ。 「可哀相でしょ!宿の人が!!」 「そっちかよ」 レオンが小さく突っ込み、アグニがわなわなと震え出したその時、犬は全ての煎餅を食べ終わり、アグニを見て一声鳴いた。 「ワンッ!」 … 「この犬がァァァァァァ!!」 「…てか、今日の昼食べた奴が最後って言ってなかったっけ…」 エイナは記憶を辿り、アグニはくだらない事にかけては信頼できないと再確認した。
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!