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「元親」
「ンだよ……」
突然かけられた真剣な口調に、少し怯む。
「そなたは我に布団から出て欲しいのだな?」
「…………おう」
「ならば今すぐその縁側で膝枕しろ」
「……はぁ?」
気の抜けた声と共に相手に「莫迦じゃないのかこいつ」という感じの視線を送る。が、全く気にしていない様子で。
元就はフンと一つ鼻を鳴らすと、立ち上がり元親へと手を伸ばす。きょとんとした表情で元親は相手の行動を見守っていたが、すぐにその手を引っ張られ、縁側まで連れて来られる。
何も出来ずに居た元親の膝に、頭の重さが圧し掛かる。
「おい、もとな……」
「我は寝る」
相手の言葉を遮ったかと思うと、元親の膝に頭を乗せそのまま瞳を閉じる。
「おーい……」
恐る恐る呼びかけては見るものの、それに返ってくるものは一つもなく、狸寝入りという様子も無く、完璧に寝入っているようで。
すやすやと眠る子供のような寝顔を覗き込み、大きく溜息。一体何なんだ。
そう思ってはいるものの、その口元は何故か綻び、表情も先程とは違い、とても和らいでいる。
――結局元親は、元就に勝てはしないのだ。
膝の重みに多少頭を悩ませつつ、両手を後ろに付きその場より空を仰ぐ。
「おーい元就。俺の足がしびれてきたら膝から落とすぞー?」
聞こえているのか居ないのか、元就はしっかりと眉を顰め唸る。
その様子を見て元親はくすくすと笑って見せた。
おわり
―――――
昔のサイトから持ってきたんですが、何か書き直したくなる文章です(^ω^)
甘いの書きたかったんですよきっと←
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