‡始まり‡

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朝霧けぶる中、 一人の少女が閑静な住宅街を歩いていた。     人の気配を察知した猫が、少女を見、走り去る。     朝日が徐々に霧を照らし、晴れて行く。   少女の心は、その景色のように 静かでいて、緩やかに響くよう…胎児の聞く鼓動の如く、 沸々と、何か明るいものが沸き上がっていた。       少女は【願い】を手に入れた。   ずっと欲しかったものを。       「…長かったなぁ……。」      少女は目を瞑ると、ゆっくりと深呼吸をし、 上を見上げた。 射し込む朝陽に、目を細める。                       それは、   【不老不死】。     現実では誰も信じない、 暗い希望。   呪いに似た、 恩恵。       少女は、 その苦しみも痛みも 知っていて、 それでいて 望み   手に入れた。                 「さぁ、どうしようかな。」                 少女は自宅への帰路を歩いた。       異端でもなく   ありきたりでもない   それは少女の【夢】だった。   小さな子が【ケーキ屋さんになりたい】と言うように、   学校へ通う子供達が【将来の夢】へ向かって進むように、   働く人達が【未来への願望や計画】を持つように、   それは少女の【夢】。   持った【夢】が、【不老不死】。   ただそれだけだった。                     そしてそれが、 全ての始まり………。
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