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「…こちら第2小隊、救援を……ぐはあぁ!」
耳につけた無線機から自軍の無線連絡が絶え間なく流れる。劣勢だな…
戦場から少し外れた場所を移動する一匹の赤豹・ブリジットは呟いた。
彼女は自軍がどんなに苦戦を強いられようと戦いに参加はしない。彼女は女王直轄の隠密だからだ。中立勢力「ヤクト」から派遣されたエリートである。
ジジッー 反対の耳につけた自前の無線機から声が出る。
『こちらクロード。戦闘エリアに入り込んじまった。開放解除して応戦する』
仲間の連絡にブリジットは溜め息をつきつつ、もう一人の仲間に指示を出した。
「シルヴィア、あの馬鹿を誘導してエリアから脱出させてやって」
『了解です』
これで仲間の心配はなくなっただろう。
解放、それは己の中に秘めたもう一つの力、ビーストを呼び出す言の葉である。
『ブリジット、その先ネットが張られてる!』
シルヴィアの忠告に従い足を止めた。
ネットとはビースト化を強制解除させる結界の通称だ。
「この先にボスがいるのね…」
ブリジットは言葉を漏らした。
ネットが感知できる所まで進み、解放解除をしようとしたその時である。
「!」
ブリジットは何者かの目線に感づき、振り返った。山を覆ううっそうと茂った森の中、崖の上にそれはいた。
自分のいる位置からだと、相手から遠く見下ろされている。
距離は100メートル程。相手もビースト化している。
敵か味方か、まずよぎるのはそれだ。
ビーストの能力を用い、五感を研ぎ澄ます。
相手は獅子であった。たくましい身体を持ったライオン。毛並みは淡い金色、たてがみは毛並み良く、鋭い双眸がこの距離でも威圧的にこちらを見据えている。
ブリジットは毛を逆立て威嚇の体勢をとった。
二匹の間で睨み合いが続く。
観察するような獅子の瞳が、女豹を捕らえていた。
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