国境防衛戦

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木霊した遠吠えはブリジット達の耳にも入った。 「なっ何よ!」 ブリジットは思わず足を止めた。 最初の遠吠えに呼応して、谷のあちこちから別の遠吠えが上がり始めたからだ。 「やべぇぞ、ブリジット。奴ら群れを仕込んでいやがった」 「わかってるわよ!シルヴィア、辺りの様子は?」 無線を通して返答がすぐにきた。 『狼の群れがいきなり出てきて…数は十…いや二十匹はいる!』 「敵の目的は、わかる?」 視界に入った獣の影に警戒しながら、ブリジットは藪に身を潜めた。 『馬が二頭大きな荷物を運んでる』 「怪しいな…」 「あんたならどうする、クロード」 背に乗るコブラが軽く体を動かした。 「大事をとって逃げるか、急行突破で荷物のとこまでいってドカンと一発くらわすか、だな」 「ん~、手ぶらで帰るのもいやだし、やってみるだけやってみますか」 ブリジットは体を震わせ、藪から辺りを窺った。 視界に敵は一匹、なんとかやり過ごせそうだ。 「ちゃんと掴まってなさいよ!」 「おぅよ!」 ブリジットは地を蹴り、狼の群れが待ち構える谷を勢いよく駆け下りた。
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