目覚めと酒場のお姉さんのお話

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――三十分後―― 「なんや、最初からそう言えばええのに」 「……困ったマスターですね」 「お兄ちゃんごめんねぇ」 あれから詰め寄るランとドルチェに、それはもう観客が思わず『ブラボー!』と歓声をあげながらスタンディングオベーションする程の必死の熱弁を繰り広げる羽目になった。 それによりなんとか納得してもらい、三人にはとりあえず一階に戻ってもらった。 「つ……疲れました……しかしなぜこんな事に……」 「ヒューイちゃんお疲れ~」 元凶のルシエラさんの脳天気な励ましが聞こえる。 なんだか逆に疲れが増したのは、気のせいではないだろうな。 改めてルシエラさんの紹介を……えぇと確かルシエラさんの年齢は……あー、年齢は皆さんの想像にお任せします。 「私は永遠の二十代よぉ~」 などと宣う彼女の元々の職業は吟詠詩人であり、彼女の魔力を込めた歌は様々な効果を他者に与える。 余裕がある時にはピアノを弾きながら、その心の奥まで響く歌声を披露する。 酒好きの為自己流で勉強したらしいカクテルの腕もぴか一だ。 またケーキ作りもかなりの腕なので、酒場の営業前の昼の時間にデザート作りもお願いしている。 その愛想のいい性格とその驚きのルックスから、ルシエラさん目当ての客も少なくはない。 暴れる客にはリンゴをも握り潰す握力によるアイアンクローと、高速で飛来する果物ナイフが唸るのでご安心してお越し下さいませ。
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