ライバル名は魔王亭のお話

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辺りはもう日が沈み、夜の景色が町並みを支配しつつある。 村の建物からは明かりが燈され、夜道をぼんやりと照らし出す。 月明かりが心地いい静かな夜、皆と過ごす賑やかな夜、一人きりの孤独な夜、家族で過ごす夜、あの人と二人きりで過ごす夜、盗んだ三輪車で風になった夜、と様々な夜がある。 さて、今宵の勇者亭の夜はいったいどんな夜だろうか。 勇者亭のレストランにあるホールの一角。 テーブルと椅子が一カ所に固まって並べられ、指輪にしまい込んでいた年季の入った黒板もある。 黒板の左端にはルシエラさんに貰ったチラシを貼りつけている。 椅子に座っているのは、アリスにラン、フェイさんにルシエラさんである。 そして黒板の前には私とドルチェがいた。 ドルチェはなぜか細い横長の眼鏡を掛けている。メイド服に眼鏡のスタイル。 黒板の前に立ち右手にはチョークを持ち、いつでも発言して下さいとでも言ってるかのようだ。 黒板を背に皆を見回し、まず私が口火を切る。 「さて、今日集まってもらったのは他でもありません。二つ程ご報告がありまして、何か質問や意見があれば挙手をして発言をお願いします」 理解の色を示し皆一同に頷いた。これはいつも行う勇者亭恒例のミーティングスタイルだったりする。 昔は人がおらず、アリスと二人でこうやってミーティングの真似事をやっていたな。 アリスを見ると嬉しそうに皆を見回している。やっぱり人が多いと楽しいし、活気が違うと思う。
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