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確かあれはフェイさんが、まだいなかった頃――――
「仕込みは、こんな所ですか」
ある日の勇者亭の午後。ランチが終わり、夜の営業の仕込みをしている。
さて、ランは無事に実家に着いただろうか。
ランは今日と明日の定休日に連休を取り、実家の家族の元へ里帰りしている。
一人だとやはり準備にも、時間が掛かる……そろそろラン以外にキッチンを任せられる、料理長候補を探さなければ。
ランもかなりやるのだが、まだ修行中の身。一人で任せるのは、まだ難しい。
さて、そろそろ休憩しますか……
お腹が空いているので、急いで簡単な賄いを作り始める。
今日は準備で遅くなり、アリス達には先に食べて貰ったので自分の分だけだ。
そういえばさっきアリスは、デザートの生クリームが切れたと言って、裏に行きましたね。
「ヒューイちゃん、休憩かな~?」
突然女性らしき人物から、声が掛かる。
この間伸びした声は……
「ルシエラさん?そちらも休憩ですか?」
声のした方を見ると、いつものニコニコ顔をしたルシエラさんがいた。
「まあね~。ただアリスちゃんに、生クリーム頼んだんだけど。どこにあるか迷ってるかもと思って~」
「ああ、アリスなら裏の冷蔵庫に行きましたよ」
「ありがとう、ヒューイちゃん。お礼にチュ~してあげようかな~?」
「いえ、お気持ちだけで」
いつものことなので、苦笑しながら慣れた返答する。
あら、残念ね~と投げキッスをしながら、ルシエラは裏の冷蔵庫に向かって行った。
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