星になったあの日のお話(前)

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確かあれはフェイさんが、まだいなかった頃―――― 「仕込みは、こんな所ですか」 ある日の勇者亭の午後。ランチが終わり、夜の営業の仕込みをしている。 さて、ランは無事に実家に着いただろうか。 ランは今日と明日の定休日に連休を取り、実家の家族の元へ里帰りしている。 一人だとやはり準備にも、時間が掛かる……そろそろラン以外にキッチンを任せられる、料理長候補を探さなければ。 ランもかなりやるのだが、まだ修行中の身。一人で任せるのは、まだ難しい。 さて、そろそろ休憩しますか…… お腹が空いているので、急いで簡単な賄いを作り始める。 今日は準備で遅くなり、アリス達には先に食べて貰ったので自分の分だけだ。 そういえばさっきアリスは、デザートの生クリームが切れたと言って、裏に行きましたね。 「ヒューイちゃん、休憩かな~?」 突然女性らしき人物から、声が掛かる。 この間伸びした声は…… 「ルシエラさん?そちらも休憩ですか?」 声のした方を見ると、いつものニコニコ顔をしたルシエラさんがいた。 「まあね~。ただアリスちゃんに、生クリーム頼んだんだけど。どこにあるか迷ってるかもと思って~」 「ああ、アリスなら裏の冷蔵庫に行きましたよ」 「ありがとう、ヒューイちゃん。お礼にチュ~してあげようかな~?」 「いえ、お気持ちだけで」 いつものことなので、苦笑しながら慣れた返答する。 あら、残念ね~と投げキッスをしながら、ルシエラは裏の冷蔵庫に向かって行った。
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