お祭り男爵とお祭り女王のお話(前)

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「おっちゃん!後二回やらして」 「あいよ!!」 店主の威勢のいい声が響きお金と共に玉を六つもらう。 さて……試して見るか…… またもや最初に見せた三連射を使い、クマのぬいぐるみにぶち当てた。 ……どうだ? クマはランの時より動いたが倒れるまでは到底いかない。 やっぱり…… 「男爵ぅ……多分あのクマちゃん……」 ランの顔が曇り呟く。 「ああ……」 中に重りかなんか入ってるよな……まあ、出店じゃあよくある話だけど……この俺にそんな真似をしてただで済むと思うなよ。 「おっちゃん!ちょっとあのクマ触ってもいいか?」 射的屋は明らかに嫌そうな顔をする。 「だ……ダメダメ。そこから動いちゃだめだよ」 「ふーん……残念……」 まあ、聞いてみただけだけど……やっぱり怪しいな。 やはり、お祭り男爵奥義を出さなければいけないか…… 「男爵ぅ……もうええよぉ……ありがとなぁ」 「ラン……諦めたらその時点でどんなことも叶わないんだぞ」 「けどぉ……」 ランの頭を撫でて笑い掛けた後。左手を逆手にして胸元に掲げ、ペコリとお辞儀する。 「女王様、この男爵めにお任せ下さい。必ずやクマを倒してみせます」 ランはこちらを見つめながらうっとりとしてる。 「あぅぅ……男爵ぅぅ……取ったらうちのファーストキスあげるぅぅ」 「……さてやっぱり帰るか……」 「冗談やぁぁ!!クマちゃん取っててぇぇぇ!!」 「任された」 自信満々にニヤリと笑い腕を捲る。
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