お祭り男爵とお祭り女王のお話(前)

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距離を確認してクマの直線上に水平に立ち、左足をクマに近い方に右足を逆に開き腰を落とす。 そして左手のゴムを右手で引っ張り、そのままゴムを弾くのではなく、サイドスローの要領でゴムの反動と自分の腕の力、そして右足で地面を蹴り上げた加速の力をプラスして…… 打ち抜いた。 玉は弾丸の如きスピードと威力を持ち、腹に響く轟音と共にクマのぬいぐるみを打ち抜く。 「必殺……お祭り男爵ハリケーン」 フフ……決まったな…… 実際にはゴムなしで戦場で地面に落ちてる自らの気を込めた石等を敵に投擲する技であるのだが。 今はパチンコ玉に気を込めた。 射的屋のおやじはありえない威力の玉を見せつけられた為、驚きのあまり口をあんぐりと開け固まっている。 「おっちゃん!当たりだよな?」 意地の悪い笑顔を浮かべる。 「あ……ああ……当たり……だ」 店主は少し待てと言うように手で制し、ぬいぐるみを隠してごそごそやってから手渡してきた。 まあ、多分重り外したんだろうなぁ…… 構わずランにクマのぬいぐるみを渡す。 「ほら。女王様」 ランはうっとりとしながら受け取る。 「男爵ぅぅ!ありが……あれ?」 なぜかクマのぬいぐるみを見たラン言葉が途中で止まった。 「どうした?」 「うわぁぁぁん!!クマちゃんのお腹に穴が開いてるよぉぉ!!ふぇぇぇん!!」 げっ……玉が突き抜けてる…… 「うわぁぁぁん!!クマちゃぁぁん!!死んじゃ嫌やぁぁ !!」 本当に誰かが死んでしまったくらいの勢いで泣き叫ぶラン。 ぬいぐるみが死ぬかよ……けどこのままじゃこいつ泣き止まないよな……
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