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「男爵!探したぞ。あれ?ランはどうした?」
声の主はヒロだ。俺達を探し回っていたようで息が弾み、うっすらと汗を拭いている。
いた……情報提供してくれるやつ。
素晴らしいタイミングだ。もしランといる時に一緒にいたなら、ヒロはやばかったかも知れない。
「ヒロ!……丁度良かった」
自分の不甲斐なさから、素直に頭を下げて今までの出来事を話した。
「悪い、俺が目を離したせいで!」
「ヒューイ……お前は確かに喧嘩は強いよ。けど俺より年下だろ?そんな思い詰めるなよ。お前だけでも無事で良かったんだ」
ヒロは優しい眼差しでこちらを見つめ続ける。俺とそれ程年齢は離れていないのに、ずっと大人に見えた。
「問題はこれからどうするかだ。一緒に考えよう!」
いい奴だなヒロは……俺をまったく責めないどころか、動揺を表に出さずに励ますなんて普通出来ない。
「ヒロ聞きたいことがあるんだ……ここら辺を取り仕切ってる組織かグループなんかあるのか?」
ヒロはすぐに思い付いたのか、間髪いれずに答える。
「ああ。多分モスカファミリーだと思う」
――ヒロの話によると、ここ最近ここら一帯で揺すりや強引な商売をしているモスカファミリーというグループがあるらしい。
その数は三十人程のグループで、脅しのためか盗みや殺人を平気ですると言う噂を意図的に流しているらしい。
「城の騎士団か、ここらの自警団に言えばいいじゃないのか?」
「それが……報復が怖くて言い出せないでいるんだ。実際殺人まで起こったことはないし、見てみぬふりするしかなくて……それに……」
それにモスカファミリーにはかなり名の知れた、ゲログルガという初老の強者魔術師がいるらしい。
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