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「噂が広まりどこも俺を雇ってくれず……蔑んだ目で見やがる……けどな……こいつらは違ったんだ……俺を必要としてくれた」
ゲログルガは気絶して倒れている男達を見てそう言う。
ゲログルガ自身ではなくその力を利用する為仲間として迎え入れたとしても、それは本人にはどうでもいい事なのかも知れない。
……ただ誰かに必要とされたかった彼にとっては……例えそれが金と暴力による脆い繋がりだったとしても。
「分かるか?魔術しかない俺がそれを振るう場所を失ったこの気持ちが……」
気付いていても理解しようとしたくないないのかも知れない……もう自分は他には何もないのだからと……
穏やかだが悲しみを秘めた瞳にゲログルガを見つめる。
「分かるよ……分かる……けどさ……あんたは間違ってる。……犯罪は許されない」
「……そうだな。しかし、もう遅いさ」
「……ああ」
一つ何かを間違えればゲログルガと違わない……同じ力が全てとし生きてきた。短い言葉だけで理解できる……だが認める事はできない。それは今の自分を否定する事だから。
「ふん、話はここまでだ。お前は倒さなければならん……死んでもらうぞ!」
その言葉に呼応するかのように、御主人様の合図を待っていた炎の蛇がさらに激しく燃え上がった。
あれはくらえば骨も残らず焼き尽くされるな……
緊張か熱さからか全身から更に汗が吹き出る。
「ラン……ここに居ろ……絶対動くな!!」
そう言って大上段に木刀を天に向かって構える。
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