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ん?今の技に驚いてんのか?
ランは緊張した面持ちで恐る恐る口を開いた。
「エスラのヒューイ?もしかして男爵は……エスラの……」
しまった……ついゲログルガに答えてしまったんだ……
俺は唇を噛んで俯く。
くそっ……エスラの赤い悪魔なんて知ったら恐がられて……
エスラの赤い悪魔と呼ばれる力を恐れ避けて行く者……蔑んだ瞳でみる者……拒絶する者……皆俺を受け入れてくれなかった。
今まではそれでも良かった!いや、諦めてた……けどこいつは……こいつらは……嫌だ!!
もう俺に男爵の時の笑顔見せてくれないのかな……
俺だって皆と変わらないんだ!俺だって……俺は!!
手が真っ赤になり痛いくらいに拳を握りしめていた……ランの口がゆっくりと開かれる。
「勇者様……?」
「は?」
「エスラのヒューイって言うたら勇者様やんか」
予想外の言葉に思わず唖然とした表情になる。
「俺……エスラの悪魔って呼ばれてんだけど?」
「え?それは敵国が言うてんやろ?うちら村人はエスラの勇者様言うてるで?」
城では恐れられて、仕事以外で誰かと話す事は滅多になかったけど……勇者?冗談か?
ランは感動したのか俺の背中に腕を回し抱き着き、見つめ言う。
「男爵が勇者様やったなんて驚きや!」
勇者……俺が……?
「なあ、ラン。俺はそんな大層なもんじゃない。何人も何百人も人を殺してるんだ……」
真剣な顔をしてランは首を振る。それは違う……ヒューイは間違っていない……まるでそう言っているかのよう。
「男爵……違うわぁ……男爵がやらな誰かがやらなうちら皆死んじゃうもん……うちらの変わりに辛いこと引き受けてくれるなんて……うちらの勇者やもん」
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