お祭り男爵とお祭り女王のお話(後)

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ん?今の技に驚いてんのか? ランは緊張した面持ちで恐る恐る口を開いた。 「エスラのヒューイ?もしかして男爵は……エスラの……」 しまった……ついゲログルガに答えてしまったんだ…… 俺は唇を噛んで俯く。 くそっ……エスラの赤い悪魔なんて知ったら恐がられて…… エスラの赤い悪魔と呼ばれる力を恐れ避けて行く者……蔑んだ瞳でみる者……拒絶する者……皆俺を受け入れてくれなかった。 今まではそれでも良かった!いや、諦めてた……けどこいつは……こいつらは……嫌だ!! もう俺に男爵の時の笑顔見せてくれないのかな…… 俺だって皆と変わらないんだ!俺だって……俺は!! 手が真っ赤になり痛いくらいに拳を握りしめていた……ランの口がゆっくりと開かれる。 「勇者様……?」 「は?」 「エスラのヒューイって言うたら勇者様やんか」 予想外の言葉に思わず唖然とした表情になる。 「俺……エスラの悪魔って呼ばれてんだけど?」 「え?それは敵国が言うてんやろ?うちら村人はエスラの勇者様言うてるで?」 城では恐れられて、仕事以外で誰かと話す事は滅多になかったけど……勇者?冗談か? ランは感動したのか俺の背中に腕を回し抱き着き、見つめ言う。 「男爵が勇者様やったなんて驚きや!」 勇者……俺が……? 「なあ、ラン。俺はそんな大層なもんじゃない。何人も何百人も人を殺してるんだ……」 真剣な顔をしてランは首を振る。それは違う……ヒューイは間違っていない……まるでそう言っているかのよう。 「男爵……違うわぁ……男爵がやらな誰かがやらなうちら皆死んじゃうもん……うちらの変わりに辛いこと引き受けてくれるなんて……うちらの勇者やもん」
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