72332人が本棚に入れています
本棚に追加
俺が勇者……本当に?……勇者か。
初めて本当に自分がやってきたことを認めて貰えた気がして、嬉しさに堪らず笑みが零れてきた。
「男爵ぅぅ……格好良かったわぁ」
こちらを見つめながらギューっと力を込めて、抱きしめてくるラン。
「ラン……お前が無事で良かったよ」
ランの安心した顔を見て胸が温かくなり、思わず抱きしめ返した。
お互いの視線が重なり自然と見つめ合う。ランの睫毛は涙に濡れ、瞳も潤み女性特有の色っぽさを感じさせられた。
やがてお互いどちらからともなく距離を縮め……
しかし、そんな二人を引き裂く声が聞こえた。
「いい雰囲気の所すみませぇぇん!!助けてくださぁぁぁい!!降りられません!!」
木に必死でしがみつき震えているヒロが、なぜか敬語でこちらに向かって叫んでいる。
俺とランはヒロを見た後、顔を見合わせ楽しそうに笑った。
結局ヒロは手を貸しても降りようとする気配がなかったので、焼きそば屋達を倒した後縛る為に持ってきたロープをヒロの体に巻き付けバンジージャンプをした……いや突き落としたのだが。
男爵の真似事の時の勇気はどこへやら。
ヒロが気絶している間に焼きそば屋達を縛っていく。特にゲログルガは詠唱出来ないようさるぐつわをする。
ランはさっきの続きをしたがっていたが恥ずかしいので断っていると、ヒロが目を覚ました。
ヒロは事情を聞き呟く。
「……男爵がエスラの勇者ヒューイだったのか!?強いわけだ……」
ヒロが感嘆の声を漏らした。
「ハハ、まあな。さて、悪いが俺はこの焼きそば屋達を城に引き渡してから、モスカファミリーを壊滅させに行かなきゃいけないからここで……お別れだな」
最初のコメントを投稿しよう!