お祭りの終わりにのお話

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全ては言い訳かも知れない……全てを捨てれば約束は果たせたかも知れない。 「ラン……この話を聞くかはあなたに決めて欲しい。戦争の後で起こったある事件を……それは知らずに済むならその方がいい」 エスラの裏の話。ランの故郷の話だ……王を否定する話。もし、エスラでこの話をすれば罪に問われるだろう。 「……ヒューイ……話して……聞かなうち多分自分で調べたなるわ……」 ランらしいですね。ランなら本気で私が望まない事は、他言しないと思う。そういう性格だから話せる。 「信じるかはお任せします」 それは話すだけで胸の痛みが溢れ出す話。 「エスラとヴェノアとの戦争……私は戦争では死んでいません……私は死んだ事にされている。葬式も偽装でしょう。しかし、私はエスラに近付くことも出来なくなった……それは仲間の願いを裏切る事になるから……私は――」 全ては腐ったエスラの貴族故に……ランに全てを語った。彼女には聞く権利がある。聞いてもらわなければいけない…… エスラの……いや……王の闇を……貴族の行いを…… ランは私が話終えるまでただ、ただ黙って聞いてくれた。 「――信じるかはランに任せます……ヒロにも……ランにも会いに行けず本当すみません……」 突然首の後ろから手が回り抱きしめられた。 「アホぉ……王様とヒューイ?ヒューイ信じるに決まっとるやん……うち気付かんかってごめんな……一人で辛かったやろ……?」 「……ラン……」 思わず泣きそうになる。だが私は泣かない。自分の心に負けてしまうから。 「……遅くなりましたが……お待たせしました」 「うん……待たせ過ぎやぁ……っ……お帰り……男爵……」 「……ただいま、女王様」 奇跡とはなんだろうか……出会いが奇跡と言うなら再開も奇跡だ。 二人の奇跡の代償は十年の歳月。しかし私はそれに感謝する。 変わらずにいてくれた仲間に会えた。それはかけがえのない贈り物。
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