勇者の村のお話

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町で山賊の話を騎士団に報告した後、目的の村を目指した。 その村とはこの東大陸に位置する、アレンの故郷であった村。 大陸は元々一つだったのだが、数百年前より大陸は東西南北で境界が引かれ。便宜上北は北大陸、南は南大陸と言われるようになった。 アレンの故郷の村はラキス村という。正直特に珍しい特徴のない、どこにでもある普通の村。農業や名産品の果実や近くで取れる魔法石などを売り、生活している。 あえて特徴をあげるならば、近くを流れる川は水が綺麗なことで有名で、村にしてはかなり広いということくらいだろう。 しかし、アレンが勇者に選ばれてからというもの事情が変わった。人々には勇者の村と呼ばれ、観光客が訪れるようになっていった。 勇者饅頭や、勇者弁当が売り出されたのは言うまでもない。 私は魔王との死闘が終わった後、勇者亭という名の料理店を出店。伝説の僧侶の知名度とその料理の味により、町一番の人気店になった―― 「――というわけなんですよ」 つらつらと今から向かう村について説明口調でドルチェに教えてやる。メモまで取っているので手が抜けない。 「……なるほど。それほどの人気店なら、一度試食させてもらわなければいけません」 なんだろう。気のせいか、ドルチェの瞳がキラリと光った気がした。 もしや料理人魂に火がついたのだろうか。 「うちの料理長は物凄い腕ですよ。ドルチェと同じくらいのレベルです」 「……それは楽しみです」 「あ、見えてきました。あそこです」 ここから肉眼でぎりぎり見える距離になった村に向かい指を差す。 村は四メートル程度の木製の塀で囲まれており、ここからは村へと通じる入口が小さく見えた。 以前魔王がいた頃は魔王の支配下である魔物……いわゆる人を襲う怪物達が大陸中に放たれ、様々な被害をもたらしていた。 その時に作られたのがこの簡易なバリケード。 バリケードには強化の魔術文字が描かれていて、定期的に魔術の補給が必要だが鉄並の強度になってる。 魔王没落以来少なくなったとは言え、いなくなった訳ではなく今もそのまま残っているのだ。 まあ、空を飛ぶ魔物にはお手上げなのが痛い所ではあるのだが。
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