第ニ章 始まりのお話

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「美味しい物は幸せな気分にしてくれるんだ。美味しいご飯を食べながら最終会議だ!」 「あー……つまり……王族や貴族やら軍の頭の固い偉いさんが集まる三日後の命を左右する最終会議に、食事しながらのほほんと会議をしたいと?さらにさらに、あまつさえその料理を自分達で作ろうとでも?」 「全くもってその通り!流石ヒューイは以心伝心だ!」 悪びれもなくビッと親指を立てていい笑顔だ。褒められても普通に嬉しくない……戦いの時以外は本当子供っぽいなぁ。 それに呼応するように、爆裂音と共に部屋の扉が爆砕された。石扉が粉々になって見るかげもない。 いや、意味が分からないから。 「アハハハ!話は聞かせて貰った!僕を置いて何を楽しそうな話をしてるんだい?僕も手伝おうじゃないか。君達が断ろうが断固やる!」 やっぱり今の魔術はロキか……余計なのが来たなぁ。あ、魔術から出た煙でむせ出したし。 相変わらず場所もわきまえず、高らかに嘲笑しながらなんでも破壊するのは止めて欲しい。今ので外が騒がしくなってるし。扉壊す理由が分からない。 「ヒューイ!」 「ヒューイ!」 はぁ……全く。面倒な事になりましたねぇ。 「はいはい、やりますから。アレンとロキは食堂で材料とキッチンの確保をお願いします。私は王様と話を着けてきますから。あと――」 肩を竦めながらも、いつものように指示を出し、内心では楽しそうだと気分が高揚している自分がいた。 もし王が渋ってもアレンが『言う事聞いてくれなきゃ僕魔王退治しないもん』と言っていたとでも言えば、これくらいの我が儘くらいあの気弱な王ならたやすく懐柔できるだろう。 フフッ、アレンの性格は知っているだろうから問題ない。 それにしても……結局私はこういう馬鹿をやるのが好きなんだろうな。 頬が緩むのを抑えながら、騒がしくなっている廊下の兵士達を掻き分け、王の元へと向かった。 アレンは言った――料理は人を笑顔にするのだと。 アレンは言った――料理は人を幸せにするのだと。 アレンは言った――俺は料理で人を幸せにしたいのだと。 アレンは言い残した―― それが俺の夢だったのだと――
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