彼の憂鬱とガールフレンドのお話

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深淵なる意識の奥底。漆黒の闇が全ての世界。闇は人の恐怖心を掻き立てる。 それは本能からくる警戒のサイン。だが、目の前に染まる闇はそれを感じさせずまだこの世界に存在していたいとさえ思わせる。 もし、初めから闇しかない世界があればこういう感じなのだろうか。 何かが自分を呼ぶ。この重たい何もない意識の中、まだしばらく何も考えずに体と思考を放棄していたい。 「マ……ター?起き……下さい……」 誰かが声を掛けてくる。 「マスター起きて下さい」 瞼に光が当たりなんだか眩しい……朝?まだ眠い……もう少し…… 「……マスター、起きられないなら十秒後に貴族のドジっ子妹風に起こします」 まだ瞼が開かない……このまま惰眠を貪っていたい…… 「一、ニ…………」 なんでしょうか? 「…………八、九、十」 また死へのカウントダウンに聞こえます。 「お兄様。起きて下さいましっ!早くしないと金持ちの道楽の無駄に豪華な舞踏会に遅れてしまいますわっ!お兄様?起きて……キャッ!?何もない所なのになぜか転んじゃった!」 その台詞の直後第六感が知らせる。とにかく避けろと。 目を開けるとメイドさんが右肘を突き出し、宙を側回転しながらベットに向かって来ている。 やばい!!と脳が認識し思考に移る前に体が動きベットを高速で転がり床に落ちる。 一瞬後勇者亭に日常生活ではまず聞く事のない、ベットの反発と綿毛のように軽いらしい体重(ドルチェ談)が乗った肘が衝突し合って奏でる、有り得ない程の轟音が鳴り響く。ズドオオオオンとかいう効果音が現れてしまいそうな感じだ。 恐る恐る起き上がりベットを覗き見ると、メイドさんのローリングスカイエルボーがベットにめり込んでいた。
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