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アリスは勇者亭が出来てからずっとホールをやっている。ああ見えてそこら辺の接客業の大人達が、敵わない程の接客上手だ。
新人の指導もしており、ホールは私もアリスには勝てない程だ。アリスに任せておけば大丈夫だろう。
「じゃあドルチェ頑張って下さ……ってどうかしましたか?」
アリスにお願いしに向かおうとすると、ドルチェに服の裾を掴まれた。
なんだかじーっと見つめて来る。
「……マスターは教えてくれないのですか?」
ボソリとそう呟くドルチェ。何と答えるか悩んでいると、さらに続けるドルチェ。
「……マスターがいいです」
それを見て思わず苦笑した。ドルチェも不安なんだろうか。それとも他に理由があるのか……
「……笑うとは失礼なマスターです。もういいです」
ぷいとこちらに背中を見せて、怒りをアピールしてくるドルチェ。
そんな分かりやすい態度だと、からかいたくなってしまう。
「そうですか。やはり私が教えようと思ったのですが、残念ですね」
そう言うと風が巻き起こる程のスピードで振り返ってきた。
「……むぅ……」
機嫌を損ねて頬を少し膨らませたドルチェに、結局なぜか私が教えさせて下さいとお願いする羽目になってしまった。
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