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「それにあんたの料理食べて気付いたんや……うちが行きたかった三ツ星レストランの料理は超高級なレストランやった……うちはその高級な味に惹かれた」
何かを思い出したかのように目を伏せ続ける。
高級指向の三ツ星レストランなんて堅苦しいので私はあまり好かない。
……なので行く機会がほとんどないから比べる材料があまりない訳で、ランの話を鵜呑みにするしかない。
「けどな……それは今まで安い値段で本当に美味しいと思える料理を食べたことがなかったからや」
ランはこちらの目をまっすぐ見て言う。その瞳からは感謝の色が見て取れた。
「あの時食べたあんたの料理は美味かった。あんな手頃な値段で、高級料理店に負けない味を出せるなんて驚きやった……色んな工夫やあんたの天才的な味付けや、調理の仕方が生み出した味や」
ランはいつものニカッとした明るい笑顔ではなく、こちらに言い聞かせるように優しく微笑んだ。
「うちも手頃な値段で誰でも食べにこれて、しかもとびきり美味い料理を目指したいと思ったんや……まあ理屈なしに一言で言うとな……」
何を言うつもりなのかランは照れ臭そうに視線を逸らす。
「なんや、恋してもうたんや……あんたの料理にな」
正直な所あまりのべた褒めに戸惑っている。けどランはこういう時嘘はまず言わない。だからきっと本心なのだろう。
褒められ慣れていないせいか、どうにもむず痒い。
「……褒めすぎですよ。ただ理由はどうあれ、私はランが来てくれて助かりましたよ」
「そうかぁ。それにうちは今勇者亭が大好きやからな!本当来て良かったと思うわ。なんか皆あったかいもん」
「そう言ってもらえると嬉しいですね」
嬉しい言葉に微笑む。私は勇者亭の皆を、自分の家族だと思って接している。
「それにしても、ヒューイは自分の料理に自信なさすぎや。戦いとかに関しては、自信満々やのになぁ」
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