パティシエ達の協奏曲のお話

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「まあ、トルテみたいな真っ直ぐないい子が、辛い思いして欲しくないんですよねぇ」 「……お兄さん……」 泣き笑いのような表情を見せるトルテ。 「はいは~い。そこまでそこまで~」 とお~とか言う掛け声が聞こえたかと思うと、ルシエラさんに押し退けられた。 「なんだかいい所持ってかれちゃったけどぉ。ただ、私が望んでいるのはトルテちゃんにケーキ作りをまた好きになって欲しいのよ~」 とりあえずと言いながら、トルテの頭を撫でるルシエラさん。 「まずはあなたの手でグラッセさんから変えてみましょうか~」 「ふぇ?」 ルシエラさんのいきなりな振りに、頭を撫でられながら不思議そうに首を傾げるトルテ。 「その前に、私ばかり質問しちゃったしね~。トルテちゃんは何か聞きたい事はあるかしらぁ?」 瞳に溜まった雫を拭い取り、トルテはうーんと唸り考える仕種をする。 「あの……あの、お姉さんはこの店は好きですか?ケーキ作りは楽しいですか?……ケーキ作りは好きですか?」 「最高に愛してるわよん」 どこか自慢げで力強くも魅力的な笑顔でウインクしてみせた。 それは私の心にも響く素敵な言葉――
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