72332人が本棚に入れています
本棚に追加
ランの話しによると私が旅から帰って来たんだとサンチェに聞いて、勇者亭でアリスと一緒に待っていたようだ。
私がお嫁さんを連れてきたと聞いたアリスは、いてもたってもいられず入口の前で待ってたらしい。
「いやぁ、うちは鈍感で恋愛ベタなヒューイが、いきなりお嫁さん連れてくるなんてありえん言うたんやけどな」
手を後頭部に当ててハハハと楽しげに笑うラン。
ハハハ、どうやら減給して欲しいようですね。
それからアリスと村長との一連のやり取りがあり、私が村長に吹き飛ばされて気絶した。ここまでは分かる。
どうやら気絶した私にトドメをさそうと走り迫る村長。
――いや、村長。気絶してるのに追撃って、本気で私を殺す気だったんですか!?
その筋肉の追撃の拳を……
「ドルチェが片手で止めたんや!村長の攻撃を片手で止めるなんて、あの子何者なんや?ヒューイに雇われた、言うてたけど」
「いやその……私が雇った、ただの料理人ですよ」
ランはもっと聞きたそうだったが、上手くごまかす自信がないので無視することにした。
◇
ドルチェが村長の拳を受け止めた後、村長とドルチェの間に目視するのが困難なスピードの拳による連打の嵐が生まれた。
一撃一撃が必殺の威力が込められた拳と拳のぶつかり合い。それにより、周りに突風が巻き起こり砂煙で二人の姿が見えなくなる。
砂煙が渦巻く中二人は一度距離を取り、ドルチェは必殺の一撃を打つため腰を低くし構える。
村長は竜をも倒したという渾身の一撃を繰り出すため、拳を大きく後ろに構えた。
二人が持つ最高の一撃が放たれようとするまさにその瞬間。
最初のコメントを投稿しよう!