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「ただ私の村の風習で、こういう時にやらなきゃいけない事があるんだ」
そう言ったと同時に拳が迫り来る――この程度なら避けれる。
けど……
まともにくらって頬に鈍い痛みが走り、床を転がる事となった。確かに避けれた。しかし最初の言葉が頭に引っ掛かり避けなかった。
「すまんね……男親が娘をやる時は一発殴るのが風習なんだよ。本当すまん」
「構いませんよ。それだけ大事なんでしょうし……これで引いてくれるんでしょう?」
「ああ、よろしく頼むよ」
差し延べられた手を掴み起き上がると、何やら慌ただしい足音が聞こえてきた。
「お父さん!ヒューイさんを殴るなんて何を考えているの!?ヒューイさんは、ヒューイさんは私の恩人なんだから!お父さんなんか嫌いですよ――――!」
トルテ?
両親にはそういう話し方なのか……癖になってるのか敬語混じりだけど。
それにしてもいきなりな登場。
「トルテ?えーと、今のは何でもないんで……ってあれ!?」
お父さんを見るとガーーン!とショック死しかねないくらいに真っ青になり、顎が外れるんじゃないかというくらいに口が全開になっていた。
しかも気絶してるんじゃないかってくらいに動かない。
「いや、トルテ。今のは理由があるみたいですから……嫌いにならないでやって下さい」
「ヒューイさんがそうおっしゃるならぁ……お父さんがごめんなさいですぅ」
いいんですよと言ってやると安心したのか、父親の方に近付いていった。
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